長文です。
歯石除去は1回で出来ないのですか?
と、たまに聞かれます。
せめて2回で...とか、回数を減らしてくれとか...。
何度も来たくない気持ちは分かります。
でも闇雲に何回も来い、と言っているわけではありません。
端的に言えば、もの凄く汚れた散らかっている部屋と、ほどほどに片付いている部屋を、同じくらい綺麗にしかも同じ時間で掃除しろ、と言われたら如何でしょうか?
私たちが、3回、4回...来て、と伝えた場合に1回にしてくれ、というのは私たちから見ると無茶を言っていることになりますが、言う方は多分深く考えていないのでしょうね...。
時々、時間がかかるのは解ったから、時間係っても良いので1度でやってくれ...と食い下がる人いらっしゃいます。
なるほど、一応理屈は通ります。
しかし、歯石を取るのはただ清潔にするだけ...ではなくて、歯周病の治療のためなのです。
レントゲンや歯周ポケットの深さ、歯の動揺度などを検査して、歯石を取り、歯磨きのチェック、指導をして、歯周病の改善をしていくことなのです。
歯ぐきの状況を調べながら行っていくので、歯石を取ればそれで良し...ではありません。経時的変化をチェックする必要があります。
また、
たくさん付いた歯石を取る場合に、その後に知覚過敏が起きたり、一過性の歯ぐきの痛みが出る場合もあります。
急いで多くを進めようとすると、実感として不快なことが起きて嫌になってしまう...ということも有ります。
よって、刺激を極力少なくして歯ぐきの状態が良くなっていくのを実感して頂きながら
治療を進める必要もあります。
一見歯石が少ないように見えても、歯周病が進行している場合は、歯周ポケット(歯ぐきの溝)が深いので、手間がかかりますし、痛みが出やすいので少しずつ行わなくてはなりません...
とにかく、歯周病を改善するために、時間と回数をかけて治療することが歯石除去なのです。
歯周病の治療には平成八年にガイドラインにより、健康保険の規定もあります。
歯科医学的にも闇雲に早く終わらせられませんし、健康保険の制度上も出来ないようになっています。
ただ、
1回で出来ることもあります。
子供や若い人の歯肉炎は、少し歯石を取れば済むことも多く、繰り返し歯磨き指導をする場合を除き、1〜2回で済ませることもあります。
定期的に受診されている方で、非常に綺麗に保たれている場合は、1回で済むこともあます。
逆に失った歯が多くて、現存する歯が少なければ、1回で済みます。
当院では、平均すると半年ごとに3回の来院で...と言うことが多いです。
ただ、人それぞれなので、毎月来て頂くような患者さんもあれば(毎月1回)、3ヶ月毎とか、年に1度(3回くらい)、の方もあます。
実は、
3回で全部の歯石を取る...というのも、規定の回数より減らしているのです...。
歯の本数が揃っている方で、全体に歯石が付いている場合に、先のガイドラインに沿うと、最低4回は来院が必要です。
多いと8回です。
歯石除去の保険点数は、歯周病の程度で差が設けられているのでは無くて、程度が軽くても重くても1本当たりで決まっています。前歯が点数が低くて(安くて)奥歯が高い設定です。奥歯の方が手間がかかる...と言う理屈です。
1本に付き1分で済む歯石除去も10分掛かる場合も同じなのです。
最初に軽く行うブロック単位の歯石除去や、重度歯周病で1本1本の歯石除去後に歯ぐきの小手術を伴うような場合で程度の差は作ってあります。
しかし、頻度的に1本いくら...で行う歯石除去の割合は多くを占めます。
そして、一日に付き2ブロックまで、という規定もあります。歯の本数が概ね揃っている場合に、全体を前歯上下、左右奥歯の6つのブロックに分けて進めていく場合に、2ブロックまでなのです。全体の1/3です。
細かく書くと、
上下前歯を行う場合、12本まで1度に出来ます。
上あごまたは下あごで前歯から奥歯まで2ブックだと、親知らずがあると11本まで無いと10本まで出来ます。
2ブロックを超えて行う場合は、8本までです。
例えば2つのブロックで欠損歯があるので7本しか無い場合に、3ブロック目の歯も手を付けられますが、あと1本しか出来ません。
また、必ず全体の縁上スケーリング(歯ぐきの上に出ている歯石を軽く取ること)を行ってから歯ぐきの下まで歯石を取る、というふうに決まっています。
その後で2ブロックごと全体で6ブロック行うので、最低4回ということになります。
これは歯科医学上のことではなくて、制度的な決まりです。
3回では終わらない計算です。
しかし、
実体としては、この規定を運用しにくいことが良くあります。
歯石が多くない場合に、少しずつ余分に行えば3回で済むので、どうしても4回は必要な人をのぞき、全体を3回で行っています。
ということは2ブロックおまけ...というか、値引きしている...と言えなくもありません。
何故3回にするかというと、3回来て頂ければ大体の変化が確認できことと、3と言う数字なら何とか納得して頂ける...と言うことはあります。
もちろん闇雲に3回では無く、状態により4〜8回だったり、2〜1回ということもあります。
当院の歯石除去はとても丁寧に行うので、1回当たり40〜60分を掛けます。
時々、前に係っていた歯医者では1〜2回で終わった、前は10分くらいだった...と言われることもあります。
失礼ながら「質」が違うのです。
また、掃除の例えでいきますが、昔、お嫁さんが掃除した後で姑さんが障子の桟を指でなぞって、まだ残っていますよ...と言うが如く、当院ではそういう指摘がされないようにしっかり掃除しています。
9割がた30分で行って残り1割は3〜4分かというとそうではなくて、15分必要だったりします。
なので時間はかかるのです。
それでもどうしても1回で...と諦めない方も有ります。
その場合は、1回の時間で終わる範囲でざっくりと掃除することで終わります。
それは決して回数かけた場合と同じではありません。
いろいろものが置いてある部屋の掃除を、ヘッドも替えて隅々まで、ではなくて真ん中へんをぐるりと掃除してお終い、という感じです。
3回分の時間をかけても1回で...という要求も、医学的では無いし、保険の規定にも引っかかるので出来ないのです。
理解して来院されている方は、大体において歯周病の進行は留まっています。
1回で...という方は、1回で済まないほどたくさん付いていることが殆どです。
歯石は歯ぐきを押し下げながら沈着していきます。
付かないように磨くのが理想ですが、少し付いたら定期的に取る...のが賢い対応であるのは確実です。
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